どうもDrアビです。 今回は普段僕たちが書いているカルテに関して書きたいと思います。
カルテは医療に欠かせない一つのツールです。
ですが患者さんからはいったい何が書かれているのか全く分からないものです。
いったいどういったことを書いているのでしょうか。
そこには患者さんに関する大量の情報だけではなく、ビジネスなどでも用いられるPDCAサイクルに似た手法も使われています。
ここでは例も用いながらカルテに関して、患者さんも注意することも含めて書いていきます。
カルテには何を書いているの?
カルテとは診療記録のことです。
有名な話ですが、もともと「カルテ」という言葉はドイツから入ってきました。
明治時代に日本が医療を学んだドイツの言葉が使われるようになったようです。
(他にムンテラやクランケ、アナムネ、ナートといった医療用語もドイツ由来です)
そしてその診療記録には医師法と呼ばれる法律で記録しなければならないことが定められています。
患者さんの住所・氏名・性別・年齢
病名と主な症状
処方や処置などの治療方法
診療の日にち
しかし当然これでは不十分です。
カルテには上記に加えて問診等で明らかになった患者さんの情報も記録されています。
また入院患者さんの場合、入院後の記録や看護記録なども含まれています。
主訴(患者さんの主な訴え)とその病歴(経過)
既往歴(今までかかった病気)やアレルギー、服薬歴、入院歴、家族歴
生活状況(排尿や排便状況、食欲、睡眠、嗜好品、社会歴、妊娠の有無など)
現症(診察の所見など)
検査結果(血液検査や画像検査)
治療方針
入院後経過および看護記録
何がいつ、病気に関係するかわかりません。そのため、カルテにはなるべく詳しく患者さんの情報を記載する必要があります。
近年は医療界でも特に個人情報保護が徹底されています。その理由は患者さんが思っている以上にカルテには個人の情報が含まれているからです。
また上記の詳細な情報とは違って、普段の僕たちが記載するカルテには患者さんの現在の状況や治療方針なども記録されています。
この入院中および外来患者さんに対する普段の診療の記録は、SOAPと呼ばれるカルテの基本に基づいて書かれています。
このSOAPは実は一般的なビジネスにおける商品開発や品質管理などにも用いられる、PDCAサイクルと非常によく似ています。
カルテの基本のSOAPとは
PDCAサイクルとは前述のとおり、商品開発や品質管理などに用いられる手法で、商品や業務を継続的に改善する方法です。
PDCAはこの改善方法の頭文字を繋げたものです。
P;計画(Plan)
D;実行(Do)
C;評価(Check)
A;改善(Act)
PDCAサイクルで大切なことは、継続して繰り返すということです。
対象となる事柄をP;計画してD;実行、それをC;評価してA;改善につなげ、再度P;計画するというサイクルを繰り返すことでより良いものへと改善することを目的としています。
これに対してカルテの基本としてSOAPという手法があります。これも以下の頭文字をつなげたものです。
S;主観的情報(Subjective)- 患者さんの主張や訴え
O;客観的情報(Objective)- 診察や検査結果の情報
A;評価(Assessment)- SとOから導かれる現状の評価
P;治療計画(Plan)- 以上を踏まえた上の今後の治療計画
(AとPはA/Pのように統合して記載する場合もあります)
ここでもPDCAサイクル同様に継続して行うことが大切です。
すなわち、現在行っている治療に対する患者さんのS;主観的情報を聞き、診察や血液検査、画像検査、血圧などのO;客観的情報を踏まえて、患者さんの現状をA;評価し、P;今後の治療計画を打ち出します。
そして次回診察時に以前のP;治療計画に対する患者さんのS;主観的情報を聞いて、といったふうに、SOAPも継続して行うことで患者さんの状態を改善していくとことを目的としているのです。
診療したら終わりではなくて必ずS;主観的情報やO;客観的情報を踏まえて、施行した診療に対するA;評価を行い、次回以降の診療のP;計画をたてることが大切なのです。
主観的情報と客観的情報を別々に記述し、そこから評価・計画へとつなげるこの手法は、医療だけではなく一般的なビジネスでも利用できそうですね。
カルテの例
実際のカルテ内容をご紹介しましょう。肺炎の患者さんを例にしてみます。
S;入院して酸素を吸入して息苦しさは少し楽になった。
熱っぽさもない。
食事は全量食べている。
O;○○抗生剤を1日3回使用中
全身状態良好、食事摂取良好
血圧100/80mmHg、脈拍80bpm、体温37.5度
酸素飽和度100%(O2 3L/min)、呼吸数13回/分
右上肺野にラ音聴取
血液検査 白血球10000
A;入院時より自覚症状改善。抗生剤投与中。喀痰培養待ち。
酸素飽和度は100%で呼吸数は安定。酸素投与量の調節。
右上肺野のラ音は変化なし。病巣の評価が必要。
血液検査では昨日と比較して白血球は低下。抗生剤は効果あり。
P;喀痰培養結果が出るまで現在の抗生剤継続。
レントゲン検査、動脈血ガス検査を行う。
患者さんとご家族と治療方針の再確認。
どうですか?普段僕たちはこのようなカルテを書いているんです。
患者さんのS;主観的情報とO;客観的情報を別々に記述し、A;評価を行うことで、今後のP;計画を導き出しています。
今後はP;計画に基づき診療を行い、次回診察時にその結果としてのS;主観的情報とO;客観的情報を再度A;評価してその後の診療をP;計画する、という流れになります。
ただ、これはあくまで例えです。実際はもっと情報が多かったりします。そしてA;評価ももっと詳細に書いている場合もあります。
さらにカルテの書き方も流派のようなものがあり、S;主観的情報の最初に「入院〇日目、△薬剤使用×日目」といった情報を書かれる先生もいます。
これはただの一例としてみていただけたらと思います。
(医療関係の皆様、カルテの内容の詳細はスルーしていただけると幸いです)
患者さんにとってカルテの注意点
実は、患者さんも知っておいた方がいいカルテの注意点があります。それはカルテの保存義務に関してです。
医師法ではカルテは記録後5年間の保存義務があります。
ということは、6年前の診療記録はなくてもしょうがないということになります。(現実はしっかり保存している病院ばかりですからご安心ください)
ただ、20年前に一度入院したからあの病院なら自分の記録は全部あるだろうと思って病院を受診して、カルテがありませんと言われても文句は言えないのです。
ご自身の病歴などはある程度、把握しておく必要があります。
また、カルテ開示は患者さんの権利なので、気になる場合は請求していいと思います。
ただしカルテの内容を正しく評価・判断できない場合、不安などを煽り、治療に悪影響を及ぼす場合があります。
(明らかに治療に悪影響を及ぼし得る場合は病院側もカルテ開示を拒否できる場合があります)
この辺りも考えておいていただけたらと思います。
まとめ
カルテは患者さんを治療するうえで必要不可欠です。
そこには病気に関連しうるすべての情報と、患者さんを良くするための記録が記載されています。
カルテはパンドラの箱のような印象があると思いますし、カルテばかり書いて患者さんをしっかり見ていない医者がいることも確かです。
ただ、医者が何を書いているかなんとなく分かれば、医者への距離も縮まるのではないでしょうか。
では今回はこの辺で。
何かあればコメントまでどうぞ!
それでは、また。
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